紛争・武力紛争・戦争・内戦の『違い』を分かりやすく解説

実は「紛争」「武力紛争」「戦争」「内戦」の世界共通の万能定義は存在していません。

使われる文脈、紹介している媒体によってその言葉の意味するものが異なります。

しかし万能ではないものの、多くの場面で使われる一般的な定義は存在します。

ここではその一般的定義を図を使って簡潔に分かりやすく解説していきます。

「紛争」の定義は実はとても広いものです。

定義：2つ以上の勢力が目的のために争うこと

つまり「紛争」には

夫婦喧嘩から社内抗争そして世界大戦まで

これらすべてが該当します。

「武力紛争」も「戦争」も「内戦」も紛争に含まれるのです。

ではなぜこんなにいろいろな呼び方があるのでしょうか？

それは、「紛争」の中の様々な争いを具体的な特徴によりさらに細かく分類しているからなんです。

ではそれぞれの具体的な定義を見ていきましょう。

武力紛争は紛争の中でも死者数とその手段に重きが置かれています。

定義：年間の死者が25人以上かつその手段に集団での暴力を使う紛争

つまりこの「武力紛争」のなかには夫婦喧嘩や社内抗争などは含まれません。

ニュースなどで「紛争」と言われたときにイメージする武器などを使って争っているものは単なる「紛争」ではなくより正確にはこの「武力紛争」を意味しているのです。

「戦争」は武力紛争の中でも死者の多さと争う勢力に重きを置いています。

定義：年間の死者が1,000人以上かつ国対国が争う武力紛争

国同士が集団で争うロシア対ウクライナや世界大戦などはこの「戦争」に分類されることになります。

「内戦」は武力紛争の中でも死者の多さに加え争う勢力と争いの舞台に重きを置いています。

定義：年間の死者が1000名以上かつ政府対反政府が一国内で争う武力紛争

※「内戦」は上記に加え全体死者のうち政府や反乱軍の死者が5%以上という定義がされることもありますがこれは大虐殺やテロと区別するためであり、虐殺やテロの定義に触れない本記事では注釈程度にとどめます。

つまり国軍と準軍事組織の衝突であるスーダンの争いなどはこの「内戦」に該当します。

ここまで見てわかる通り「紛争」という言葉には「武力紛争」「戦争」「内戦」も含まれています。そのため、武力紛争や戦争や内戦を意味する場面でも「紛争」という言葉が使われたりします。

つまり、

ということです。

例えば、「ロシアウクライナ紛争」といえば紛争の中でも国vs国の「戦争」を意味します。つまり正確には「ロシアウクライナ戦争」です。

「スーダン紛争」といえば紛争の中でも1つの国内で勢力同士が争っているため「内戦」を意味します。つまり正確には「スーダン内戦」ということになります。

しかし冒頭にも書いたように「紛争」「武力紛争」「戦争」「内戦」には世界共通万能な定義はありません。

また現代の紛争は、争いの原因が複雑になり、多くの勢力が入りみだれ影響しあっています。そのため「戦争」や「内戦」の区別が曖昧になり違いを明確にすることが難しくなっています。

これからは言葉の違いではなく個々の状況の詳細をしっかり見ていくことが重要になってくるのかもしれません。

上杉勇司; 長谷川晋. "紛争解決学入門". 大学教育出版. 2016.

木原隆司. "内戦と経済「内戦の開発経済学」再考". 国際安全保障第38巻第2号. 2010-09-21. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kokusaianzenhosho/38/2/38_83/_pdf/-char/ja, (参照2024-04-06).

木原隆司. "太陽グラントソントンエグゼクティブ・ニュース「内戦・テロのリスクの経済学」". Grant Thornton An instinct for growth. 2015-06. https://www.grantthornton.jp/globalassets/pdf/newsletter/ex/ex_201506.pdf, (参照2024-04-06).

"衆議院議員金田誠一君提出「戦争」、「紛争」、「武力の行使」等の違いに関する質問に対する答弁". 衆議院. 2002.書. https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b153027.htm, (参照2024-04-06).

最後までお読みいただきありがとうございました。

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