田川志織の今日からできる国際協力

途上国を支援したいけど何をしたらいいかわからない。そんな人のために、アフリカ支援に携わる田川志織が社会問題から英語学習まで、国際協力に携わるための情報を分かりやすく解説します。

コンゴ支援を目指す26歳が『荒野に希望の灯をともす』を観て

今回は国際協力を目指す方へのお役立ち情報ではなく私個人の感想を記した記事になります。

 

一個人の感想なので退屈な内容かもしれませんが、暇つぶし程度にでも読んでいただけたらと思います。

 

 

何故今この映画を観ようと思ったのか

私が中村哲氏について知ったのは、恥ずかしながら彼が殉職したというニュースを見た21歳のときでした。

 

そのニュースの中で、彼が人生のほとんどをアフガニスタンという国にささげたこと、アフガニスタンの方からも追悼されるほど地域に受け入れられていたこと、医師として支援に入った彼がなぜか用水路建設に舵を切ったことを知りました。

 

こうした彼の経歴の中で最も私の関心を引いたのは、彼が1つの国に生涯を捧げたことでも、アフガニスタンから名誉市民権を得たことでもなく、医師である彼が全くの畑違いである用水路建設に飛び込んだということでした。

 

当時、国際協力という仕事に足を踏み入れたばかりで試行錯誤を繰り返していた私は、「経験も専門知識もないのになにができるのか」「経験も知識もなく踏み込んでよいのか」「私にしかできないことなどあるのか」と日々自問自答していました。

 

そんな当時の私にとって、医師として援助に入った中村氏が用水路建設を行ったという事実は、驚きとともにとても興味をかきたてられるものでした。

 

専門知識も経験もない人が助けたいという「想い」だけで人の人生を変える仕事に就くのは間違っている。

 

そう思う一方で、しかし中村氏は、専門外のことをゼロから現地で始めたにもかかわらず結果を残し現地の人にも受け入れられている。

 

想いだけで知識も経験も持たず支援に入ることへのこの抵抗感は気のせいなのか。間違っているのか。どうすれば中村氏のような援助ができるのか。

 

人を支援する道に進むなら、現地に根差し、現地に受け入れられ、現地の人と共に行う支援活動をしたいなら、いつかは必ず彼の生涯を知らなければならない。

 

そう思いつつも、目指すものに向かって進むことに精一杯になり、なかなか彼について詳しく調べることができていませんでした。

 

そんな折、たまたま友人と遊びに訪れた会場で数週間後に中村氏の人生を題材にした『荒野に希望の灯をともす』が上演されるというポスターを見つけました。

 

これは、ちょうど私がコンゴ民主共和国へ個人で入国し援助活動を行おうという計画を立てた頃でもありました。

 

こんなタイミングはもうないかもしれない。彼の人生を知ることでコンゴ民主共和国での活動へのヒントをもらえるかもしれない。そう思い今このタイミングでの鑑賞に至りました。

 

映画を観た感想

彼が歩んだ道は自分の活動のヒントになるかもしれない。そんな思いで鑑賞を決めたこの映画からは、今後活動をしていくうえで重要となるであろう様々なヒントを受け取ることができました。

 

文化を尊重した介入でなければならないこと。

信頼には時間が必要だということ。

その場しのぎではなくいつかは根本原因解決にも力を入れなければならないということ。

途上国の問題解決を過去の日本人から学ぶことができるということ。

 

しかしこうした具体的なヒントを受け取った一方で、私がこの映画から一番強く感じたのは、人を助ける仕事には、助けたいという「想い」と共に『覚悟』が必要であるということでした。

 

医療施設のない村で診療所建設を計画する中村氏にその村の長老が「気まぐれで助けてすぐ去るのではないか?」と尋ねた際、中村氏は「私は途中で去ったりしません」「私が死んだとしても続けられるようにする覚悟がある」と答えていました。

 

専門家もいない知識も経験もない用水路建設に不安がるスタッフに「私は絶対に逃げない」「小さくてもできることはある」と伝え、一から土木工学を学び、最終的には25kmもの用水路建設を達成していました。

 

医療施設ゼロの場所に診療所を作り、それを増やし、総合病院を建て、ゼロから用水路を作り、農業を再開させ、難民を帰還させ、砂漠を森に変え、多くの命を救う。

 

これは助けたいという想いだけでは達成されなかっただろうと思います。

 

絶対に助けるんだという『覚悟』があったからこそ達成されたのだと思います。

 

私が、想いだけで援助を始める人と中村氏との間に感じた差はこの『覚悟』でした。

 

「出来ない理由を探す」などという選択肢ははなから持たず、「どのように実現させるか」だけを考える。

 

これは『覚悟』があるからこそできることであり、人の人生をよくしたいと思うのであればこの『覚悟』こそが必要なのだと感じました。

 

 

 

大きな組織に所属していなくとも、専門家でなくとも、知識がなくとも、想いと覚悟をもって活動を続ければ砂漠を一面緑で埋めることができる。

 

これを達成させ実例として残していただけたこと、人間の先輩として、そんな道もあるのだと示していただけたこと。

 

このことに、人の支援を志す身として、大変勝手ではありますが心より感謝しております。

 

今このタイミングでこの映画を観ることができたことはきっと意味があったのだと思えるよう、これから頑張っていきたいと思います。

 

 

たくさんのことを感じ学んだと同時に、彼の人生についてもっと知らなければと感じさせられる映画でした。

 

映画の参考文献に挙げられていた著書から読んでみようと思います。

 

映画作成並びにこの会場での上映を実施していただいた皆様、ありがとうございました。

 

最後に

当時のアフガニスタンと同様、現在のコンゴ民主共和国も世界中から忘れられ、不条理を一身に受けています。

 

中村氏が示してくださった道を、中村氏がアフガニスタンで実現させたことを、今度は私がコンゴ民主共和国で想いと覚悟をもって実行したいと思います。

 

今の私は道半ばでもなければ、スタートラインにも立てていません。

 

どこにスタートラインを引くべきかようやく分かり、今まさにスタートラインを引いている最中です。

 

5年後、10年後、この記事を胸を張って読み返せるように。

遠くではなく、目の前にあるものを見て、一歩一歩進んでいきたいと思います。