田川志織の今日からできる国際協力

途上国を支援したいけど何をしたらいいかわからない。そんな人のために、アフリカ支援に携わる田川志織が社会問題から英語学習まで、国際協力に携わるための情報を分かりやすく解説します。

今の途上国援助は迷惑?ケニア教育家ロバートさんのお話【現地の声②後】

普段話すことのできない途上国に住んでいる方や現地で活動しているの方の声をお届けするインタビューシリーズ!

 

今回は第2弾の後半です!スピーカーは前回に引き続きケニアの教員養成校で教師として働きながら情報発信を続ける現地出身ロバートさんです!

 

今回は「途上国と先進国の関わり方」がテーマになっています。

 

援助は本当にアフリカのためになっているのか?援助によって引き起こされる悪い影響とは?途上国援助を目指す人は何をすべき?

 

「途上国」と「先進国」が今後どのように関わっていけばよいのかを、アフリカ人、ケニア人として語ってくれています!

 

今回も、日本にいてはなかなか聞けない面白い内容です。

最後にはロバートさんから読者へのメッセージも!

 

ぜひロバートさんのお話をご一読ください!

 

 

ケニアの教育問題」や「植民地化が現在にどのように影響しているか」などを話してくれたインタビュー前半はこちらから↓

shiori-tagawa.hatenablog.com

 

※本記事に載っている文章や写真は無断転送禁止です。引用等に使いたい場合は事前にご連絡ください。

インタビューに答えてくれた人

Robert Omwa(37)

大学卒業ののち小学校、高校、大学で教師として働く。その後イギリスの大学院へ1年間留学。現在は先生を指導する職に就き、英語や現地語の授業の指導を行う。教師としての仕事とは別にYouTubePodcast、 ブログなども運営し日々自らの考えを世界に発信し続けている。

今回のスポット

ケニア共和国

面積:日本の約1.5倍

人口:5,403万人(2022年時点)

民族:40以上

特徴:農業が盛んで自然動物にも恵まれる/ 大きな港を持ち東アフリカ経済の要となっている

歴史:1920年よりイギリスの植民地となりその後長い抵抗と独立運動を経て1963年に独立。

現在:盛んな農業や政府の政策により2015年には中所得国入りを果たすなど経済成長を続けている。2007年に選挙後の暴動により1000人以上が亡くなり治安や経済への影響が出るなどした。しかしそのほかに大きな武力紛争はなく比較的平和な国である。

 

 

今の援助は途上国のためになっていない

- かつて植民地支配をしていた西洋諸国は、現在途上国向けに様々な援助をしています。それについてどう思いますか?

うーん。アフリカの人間として答えると、悪い影響が一つもないなら西洋や先進国からの援助はOKです。でも現在の援助はそうではないと思っています。もっと言えば、アフリカはもともとお互いを支え合うとても協働意識の強いコミュニティなんです。

例えば、私がイギリスにいたとき知人から電話があり、お金がなくて食べ物がないからお金を送ってほしいと頼まれました。また別の人は、お金がなく子どもを学校に送れないからサポートして欲しいと電話してきました。親戚からも電話がありました。

私はアフリカ人の1人としてこれらにすべて対応し責任を果たしました。彼らからの頼みに答えることに問題は感じませんでした。もし今同じ状況になっても、できることをやると思います。こんな風にアフリカは本来共同意識が強くお互いをサポートしあう社会なんです。

しかし西洋が入ってきた現在はとても個別化しています。ここが自分の土地だ、これが自分の子どもであとは他人だ、自分の仕事はこれだけだ、というようになり周りで起きていることに関心を持たなくなってきました。これは本来のアフリカの姿ではありません。

 

-なるほど。アフリカは元々外からの援助ではなく自分達で支え合い助け合う文化があったんですね。

そうなんです。さらに先ほども言ったように先進国によるサポートは悪い影響も及ぼしています。彼らはただ私たちを援助しているのではなく、「彼らが抱える問題を改善するのため」に私たちを援助しているんです。

例えば、ケニア政府は色々な国から輸入をしていますが、輸出は自由に行えていません。援助しているんだからと不平等な関係になってしまっています。フランスはかつて植民地支配していたアフリカから今でも大量の資源を受け取っています。援助を送っているといいますが、私たちから奪ったものを使って私たちを援助しているんです。

別の例でいえば、ケニアは石油をイギリスの会社に売っています。ですか石油はケニア国内ですごく高額になっているんです。何故輸出するぐらいあるのに国内で石油が高額になるんでしょうか。ナイジェリアも強大な石油産出国ですが、国内には電気がないところもあるんです。西洋諸国がサポート送っているといいますがどんなサポートですか?

さらにアフリカの人達は自国ではなくそうした先進国に仕事を探しに行きます。そしてその国のために働き、その国の建設を助け、そのまま戻ってきません。そのうえで先進国は支援として別に人を送ってくるのです。

 

-先進国の援助はアフリカの為と言いながら彼ら自身のためになっているという面があるんですね。

はい。そして先進国は、私たちアフリカの国々が独立した直後から現在まで援助を止めていません。これは問題だと思いませんか?なぜなら私たちの国のリーダーははこうして援助としてもらえる「タダ金」を期待してしまっているからです。もしお金がタダでもらえるなら、働かないし経済を気にしなくなります。

さらにこれはケニアを含めたアフリカの政治腐敗の問題にもつながっています。タダで入ってきたお金をリーダーがいくら使ったのかは誰もわからないんです。時々西洋諸国はアフリカのリーダー達がお金を盗んでいる、正しく使えてないといいます。じゃあなぜ改善もせずそのままお金を送り続けるんですか?彼らはお金を送るのを止めるべきだと思います。そうすれば私たちは自分たちの税金を使って国を運営していきます。

もしリーダーが税金を正しく使っていなければ市民はリーダーたちにプレッシャーを与えることができます。でも海外からタダでお金が入ってきていたら、市民はその内訳を知らず、リーダーをコントロールすることができません。なので、先進国からの援助はアフリカの汚職や統治の問題を引き起こしている一因になっていると思います。

 

離別ではなくリスペクトし合う共存を

-では援助をやめてアフリカから離れ何もしない方が良いのでしょうか?

うーん。私個人としては、現在のアフリカから先進国が完全に手を引くことは良いこととは言えないように思います。なぜなら、いま世界は境界線の薄い1つのコミュニティになろうとしているからです。アフリカだけを放っておかないでください。

アフリカは他のどこにもない資源をたくさん持っています。例えばこうした資源は携帯を作るのに必要です。そしてその携帯はアフリカ人にも必要なんです。資源だけをアフリカに残してもアフリカでは携帯を作ることができません。

だから私は、先進国とアフリカ、国と国との関係を「尊敬と共に築く」ことが大切だと思います。アフリカ内でもそうです。例えばケニアが他国の資源を使いたいと思ったとき、尊敬と共に関係を築ければ、争いや武器を使わずその資源を使うことができます。

 

-今の関係を断つのではなくリスペクトし合う平等な関係に変える必要があるということですね。

リスペクトがない関係はその国に悪い影響を及ぼします。例えばコンゴは銃の製造技術を持っていません。そうした武器はイギリスやロシアなどの先進国からきています。そしてそれを使った紛争の中で民間人が亡くなり、多くの子どもが学校に行けなくなっています。しかしそんな中、金などの鉱物や資源がコンゴから持ち出されてしまいます。武器を送り資源をもらう。これがリスペクトし合っている関係といえるでしょうか?

だから、アフリカには「尊敬をもって平等な関係を築いてください」といえるようなリーダーが必要だと思っています。しかし今の途上国は先進国からタダでお金をもらっているためにこれを言い出すことができません。なぜなら援助を受けている人は援助してくれる人に逆らえないからです。

例えば、私があなたに毎日朝食や昼食をタダで買ってあげている状況を想像してみてください。あなたがこの援助に依存しているなか、私が「これはするな」「それを私に渡しなさい」と言ったとします。そうすればあなたは私の命令に逆らえず従うしかなくなります。なぜならあなたをサポートしているのは私なのですから。

 

-なるほど。援助が逆にアフリカの自由と平等な関係を阻害してしまっていると。

私は、援助がなくてもアフリカは生存できると思います。なぜなら独立前までアフリカは援助なしで存在できていたからです。もし私が月に100ドルしか稼げなければ、そのお金でどうするか考え生活します。でももしあなたが毎月私に200ドル送り私をサポートすれば、私はあなたからの命令に逆らえなくなってしまいます。

でも実際には援助の200ドルがなくても私は生きていけるんです。なぜなら100ドルが私が稼いだお金でありその中で工夫して生活していくからです。もし援助の200ドルがなければもっと稼ぐ努力をするかもしれません

ですがこの「援助で人をコントロールしないように」というのは、「アフリカから離れる」「国境を閉じアフリカを閉鎖的にする」ということではありません。国境を開き皆が生きたい場所で生きることができるようになるべきだと思います。アフリカも国際社会の一部になるべきなんです。

全ては政治的です。でも私が言いたいのは、ベースの基本的なボトムラインではすべての国が平等であり、それぞれがそれぞれを尊厳をもって接することが必要だということなんです。

 

外から取り入れただけの活動は90%失敗する

-日本にはアフリカの貧困や紛争を心配し、その解決のために勉強や活動をしている人がいます。でも彼らは気付かぬまま悪い援助の一部になろうとしているかもしれない。でも彼らは助けたくて動いている。そんな彼らに何を伝えたいですか?

日本人が、紛争などの大変な地域に行き、女性や子どもを援助するのはとても良いことですし求められていると思います。なぜなら私たちはみな同じ人類だからです。肌の色は違うかもしれません。でも血の色はみんな同じ赤です。アフリカ人として、国際社会は閉鎖的ではなくお互い支え合うコミュニティになるべきだと思います。

援助が完全に悪いものだとは思いません。でも「悪い影響もある」ということを言いたかったんです。例えば先進国からのマラリアエイズなどの感染症予防や治療に関する援助は、とても有効に働いていると思いますし、良い援助だと思います。そのおかげで患者数は年々減ってきています。

学生が奨学金をもらい、それがコミュニティを変えるきっかけになったりもしています。だから援助が完全に悪いとは言いません。でも、援助のお金が人々をコントロールすることがある、ということを言いたかったんです。これは援助する側だけでなくアフリカの政府にも問題があります。

だから私は、日本の人々が世界のどこかで危機にある人を助けるということはとても立派なことだと思います。これこそ私が初めに言った「お互いを支え合うアフリカスピリット」です。

日本など先進国の人だけでなく、アフリカの人々や学生も、危機に瀕している場所を訪れ一緒にサポートするべきだと思います。同じアフリカ人として、連帯してアフリカの外にメッセージを送ることもできると思います。これこそが世界に必要な相互リスペクトだと思います。

 

-途上国を援助したいと思っている人はどんなことを気に掛けるべきでしょうか?

援助する際は現地の人の声を聞くことが大切だと思います。声も聞かず、その国の外で解決策を作って持ってくるべきではありません。例えば、日本にいながら「ここのコミュニティは水がないから困ってるんだ」「ならこの解決策がいいだろう」と思い込みそれを現地に出資するなどです。

Human centre designが必要です。人の元へ行き、その人が何を一番気に掛けているのか、何が必要なのかという声を聞いて、それを深堀していく。もしかしたら水は彼ら自身で解決できる問題かもしれません。

あなたがもし援助をしたいなら、現地に行き、声を聞き、一緒に解決策を見つけてください。彼らに話を聞き、解決策作りに地元の人を参加させてください。何が問題なのか、何が解決策になるのか。なぜなら彼らは、どのようにそのコミュニティを運営するか、あなたよりもよく知っているから。

もし解決策を外からただインポートしてしまったら、確信していますが、90%は失敗するでしょう。さらに持続性もないと思います。魚をあげるのではなく魚の取り方を教えましょう。そうすればあなたが去った後でも彼らは魚を取り続けられます。

 

愛を周りの人にまで広げて

-最後にこれを読んでいる日本人へのメッセージがあればお願いします。

いま世界は小さな一つの村になりつつあります。愛を他人にも分け、広げてください。なぜならこれが一番大切なことだからです。

どうかケニアに、アフリカに来てください。友達をもっと作ってください。そしてもっとよく耳を傾け、自分の考えをほかの人と共有してください。そして相手の視点になって物事を見るようにしてください。

これが、世界をより友好的な場所に、より幸せな場所にすることだと思います。

 

 

最後に

2回にわたってお届けしたロバートさんのお話、いかがでしたか?

 

「援助する側」になることの多い日本にいてはなかなか想像できない「援助を受ける側」の視点を知ることができたのではないでしょうか?

 

国際協力や途上国援助に携わりたいと思う方は、ぜひ今回のロバートさんのお話を参考にしてみてください。

 

国際協力を仕事にする予定はないという方も、ニュースを見るときや寄付をするときにロバートさんの話を思い出してみてください。

 

 

このインタビューの感想や質問がある方、ぜひコメント欄にお書きください!ロジャーさんに直接お伝えします!

 

 

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「この国のこんな問題について知りたい」「こんな人のインタビューが読みたい」など、ご意見等ございましたらそちらもぜひコメント欄までお寄せください!

 

最後までお読みいただきありがとうございました!次回もお楽しみに!

 

 

 

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